要望書
〔要望事項〕
(1)児童一人一人へのきめ細やかな教育活動を充実させるための施策の実現
①学校規模(学級数)による講師任用時数格差をなくすことを要望します。
校務分掌業務負担は学校規模に比例しません。しかしながら、従前からの制度では、12学級
以上の学校のみ、教務、生活指導主任軽減における講師任用が適用されます。
大規模校では教員一人につき1~2つ程度の分掌業務を担当する一方で、小規模校は教員一
人につき3~4つの分掌業務を担当する現状。小規模校教員に大きな負担がかかっているのが
現状です。日々の授業を充実させていく観点からも、学校規模にかかわらず全校で講師時数配
当の格差をなくすことを要望します。
②全学年での35人(30人)学級の実現を要望します。
文部科学省では段階的な35人学級として現4年生からは35人学級が適応されています。ま
た、東京都教育委員会においても、義務標準法の改正内容に基づき、学級編制基準の改正を行
っていただいているところです。しかしながら、現在においても、発達に課題がある児童等、
個別支援を要する児童が増加する背景があることから、基礎学力の定着やいじめの未然防止・
早期発見等、児童一人一人へのきめ細やかな児童の実現を目指す観点からも、35人学級さら
には30人学級を都独自で進められることを求めます。
③特別支援教育のさらなる充実を要望します。
東京都では特別支援教室が全校に設置されています。各校で特別支援教育が進められ、特
別支援教室設置後は、在籍して指導を受けられる児童が増え、全校に特別支援教室があること
から、各校で特別支援教育への理解が深まってきているところです。
しかし、知的な遅れはないものの、通常学級で適応できず、立ち回ってしまったり、大きな声
で話したりするなど一斉授業に適応できない児童が学年に数名在籍している現状です。現特別
支援教室制度において、児童の成長が保障できていないのが現状であり、文部科学省が進め
ているインクルーシブ教育システムの構築を目指し、どの児童も安心して学べるよう、全校拠点
校方式での特別支援教室の配置や必要に応じた加配教員や支援員の配置、ユニバーサルデ
ザインの視点からの環境整備、各市町村への情緒障害固定学級の設置のための予算配当等、
特別支援教育のさらなる充実を求めます。
また、「特別支援教室設置の原点にもどり、適切なコミュニケーションスキルを習得して、原則
1年で退級をめざす」というもので、今回はこの原則の徹底を現場に課す内容となっています。し
かし、児童一人一人の実態に即し、期限内での退級が適切でないケースが多く見られます。
様々なケースにも柔軟に応じられる制度になるよう求めます。
④ICT支援員配置の全校配置を要望します。
東京都では、デジタルを活用した教育の充実を推進する「TOKYOスマート・スクール・プロジ
ェクト」が進められ、現在においてもICT支援員などへの財政支援や授業実践のノウハウの定着に
向けた事例の発信や教員研修の実施等、学校におけるICT活用の充実に向けた支援が行われ
ています。
現在も、ICT機器を有効な教育資源として活用させるために貢献しているICT支援員ではあり
ますが、自治体ごとの配置頻度においては、ばらつきがみられます。今後も学校のニーズに応じ
たICT支援員の週複数日配置等、より一層の充実を図るよう求めます。
また、派遣職員であることから業務内容に制限があり、現場のニーズに対応できていない一面
があります。東京都が主導となり、ICT支援員が学校組織の一員として活躍できる体制を構築し
てほしいと願っています。
⑤一人1台端末配置後のネット環境やソフト面等への引き続きの支援を要望します。
急速なICT活用の中、ネットワーク環境改善や端末の予備機等の補助等、必要な経費の財政
支援を求めていただいています。概ね、一人1台の端末配置が進んでいるところですが、今現在
も児童数の増加やタブレット型パソコンの故障などで、全児童に行き渡っていない学校も存在し
ます。また、ソフト面やネット環境は自治体によって差があり、児童が一斉に使うとネット環境が混
雑しているとの報告が各市区町村から寄せられており、学習に支障無く使用できる環境が必要で
す。GIGAスクール構想のより一層の充実のため、また、故障やトラブルに対応するための予備機
の拡充や円滑な運営のためのネット環境等の改善への支援を求めます。
⑥スクールサポートスタッフ等、多様な専門性を持つ臨時職員の全校配置を要望します。
教員の教科指導充実のためにALT等の外国語の指導員や教員の教材作成を助ける専門的
スタッフ(スクールサポートスタッフ:SSS)は現在、学校にはなくてはならない存在になっていま
す。特にSSSは教員の負担軽減に大きな役割を果たしています。
また、児童の不安や心的ストレスを緩和、不登校児童及び保護者の対応が増加傾向にあり、
スクールカウンセラー(SC)やスクールソーシャルワーカー(SSW)の人材の配置を常駐にする等、
一層充実させることが必要です。
さらに、現在、保護者からのクレームや無理な要望が増えています。世の情勢から訴訟に発展
するケースがあることを耳にするようになりました。学校に対し未然防止に努める教育活動を進め
ることが求められますが、そうなった場合には、多大な労力と時間がかかり、通常業務の逼迫と
疲弊を避けられません。その際に、迅速に対応するためのスクールロイヤーの地区一定人数の配
置を要望します。
(2)副校長の職務内容や処遇を改善するための施策の実現
⑦効率的に講師・産育休代替教員を配置するための措置の改善を要望します。
産育休や休職等、欠員補充の「人捜し」が、現在も副校長の重要業務となり、時間と労力を要
しています。昨年度途中より更新された名簿の情報提供の頻度が以前と比べて増えたり、登載
者のメールアドレスが追加されたりするなど改善していただきました。しかし、現在でも東京都から
いただく登載者名簿は、連絡を試みても、タイムラグがあるためほとんどの候補者が任用済み
で、徒労に終わってしまうことや名簿登載者側にとっても、すでに任用が決まっていながら電話や
メールでの問い合わせが相次ぐ状況です。
副校長がその作業に当たり、多くの学校で副校長の時間と労力が臨時的任用の対応に追わ
れ、人が見付からない場合は副校長が担任等の業務を行うことで、さらに副校長の業務が逼迫し
ている状況です。
システム開発及び構築を早急に進めていただき、各学校での「人探し」の負担の削減を図るよ
う要望します。
⑧副校長補佐の全校配置するための措置を要望します。
副校長補佐配置制度が導入され、副校長の校務負担が軽減し、所属校教員の人材育成や保
護者、地域との連携業務等、副校長業務遂行に大きく貢献しています。
しかしながら、地区によっては全校に配置できていない、または限られた学校にしか配置でき
ていないのが現状です。扇の要ともいえる存在である副校長の円滑な業務遂行は学校運営に必
要不可欠であり、全都の小学校全校に副校長補佐の配置を要望します。
⑨教職への就労意欲を増進させる「東京手当」の創設を希望します
教員採用試験の倍率の低下が新規教員の質の低下に直結しているという声が多くの学校か
ら寄せられています。不況に強いといわれている公務員であるにも関わらず、倍率の低下が教員
の質の低下に結び付いているとすると「国家百年の計」と言われる教育に大きな禍根を残すこと
が考えられます。経費の削減が必要なことは十分に理解できますし、教員の給与は国の法令で
定められています。現在の教員の意欲を向上させ、さらに東京に優秀な教員を呼び寄せるには、
東京都独自の手当てを創出し、実質的な待遇の改善が必要と考えます。
⑩勤務管理(出退勤・休暇申請等)を含む校務・事務処理のICT化を要望します。
多くの自治体で勤務管理(出退勤・休暇申請等)を含む校務・事務処理のICT化が進んでいま
す。しかしながら、区市によって進行度に差があり、区をまたいでの進学・転学や教員の異動の際
に、連絡違いによる情報伝達に支障が生じています。全都におけるシステムの一元化、または共
有等の改善をすることが校務削減につながるものと考えます。
また、出退勤についても、電算管理ができるシステムが多くの学校で導入されています。しか
し、現在も区市によっては出勤簿や休暇簿は紙のままであったり、出退勤管理は、出張等で打刻
忘れがあった際に副校長が修正したり修正指示をしたりするなど、副校長が二重の業務を行うよ
うになっており、業務負担をかえって重くしている実態もあります。
東京都で一元化し、電算処理システムを進めて、出勤簿や休暇簿を不要にしたり、区市教育
委員会人事担当係が一括管理したりできるようなシステム導入に向けて予算措置を図っていた
だくよう求めます。
⑪副校長の多岐に渡る職責に見合った処遇を講じていただくよう要望します。
副校長の職務は多岐に渡っており、それぞれの職で職務内容にあてはまらないと思われるもの
は全て副校長が処理しています。副校長の職務の明確化とともに、副校長の職責に応じた処遇
として、管理職手当の期末勤勉手当及び退職金への反映のための予算処置を図っていただくよ
う求めます。
また、特別支援学級(固定級)設置校の副校長にとっては、通常学級のみの学校に対して事務
的な取り扱いを含む職務量が増えていることから、特別支援学級設置校、特別支援教室拠点校
の副校長に対し、特別手当等で処遇をされることを求めます。